在宅勤務になってから電気代の請求額が上がった、と感じている在宅ワーカーは少なくない。オフィスに通っていた頃は日中ほとんど家にいなかったのに、今は朝から夜までパソコンも照明もエアコンも稼働しっぱなしになる。増えて当然とはいえ、明細を見るたびにもやもやするのは自然な感覚だ。
ただ、電気代は「なんとなく高い」で終わらせず、どの家電がどれだけ使っているかを分解すると、抑えどころが見えてくる。やみくもに我慢するより、効きやすいポイントから手を付けたほうが負担感は小さい。
この記事では、在宅勤務で電気代が増える理由を家電別の内訳と計算式で整理し、今日から試せる節約のコツ、そして「電気代は会社に請求できるのか」という疑問までまとめて解説する。
- 在宅勤務で電気代が増える理由と、家電ごとの内訳
- 電気代の計算式と、1日8時間・月20日でどのくらい増えるかの試算
- エアコン・パソコン・照明でできる具体的な節約のコツ
- 在宅勤務の電気代を会社に請求できるのかという税務上の考え方
在宅勤務で電気代が増える理由と内訳

在宅勤務で電気代が上がるのはなぜか
在宅勤務で電気代が増える背景には、単純に「家で電気を使う時間が長くなった」ことがある。出社していた頃は日中の8時間ほど自宅の家電がほぼ休んでいたが、在宅勤務ではその時間がまるごと稼働時間に変わる。パソコンや外部モニター、照明、そして季節によってはエアコンが、平日の日中ずっと動き続けることになる。
電気代が上がる要因は一つではなく、稼働時間の増加・冷暖房の使用・複数の機器の同時利用などが重なって影響します。特に夏と冬はエアコンの負荷が大きくなりやすく、同じ在宅勤務でも季節によって金額の振れ幅が出やすい。
逆に言えば、増えている要因を分解できれば、どこを見直せば効果が出やすいかがわかる。まずは「どの家電が電気を多く使っているのか」を把握することが、無理のない節約への第一歩になる。
どの家電が電気代を押し上げるのか
家電が使う電力の大きさは「消費電力(W=ワット)」で表される。数字が大きいほど、同じ時間使ったときの電気代も大きくなる。在宅勤務で使う機器をこの視点で並べると、負担の大小がイメージしやすい。
在宅勤務では、消費電力が数百ワット規模になるエアコンが電気代に大きく影響しやすく、ノートパソコンや照明などは相対的に小さい傾向があります。デスクトップパソコンや大型モニター、電気ヒーターなどは、機種によってはエアコンに近い電力を使うこともある。ただし実際の消費電力は製品やメーカー、設定によって幅があるため、手元の機器は取扱説明書やカタログの表示値を確認しておきたい。
自分の環境で何が電気を食っているかを正確に知りたい場合は、コンセントに挟んで消費電力を測る「ワットチェッカー(電力量計)」を使うと、家電ごとの実測値が把握できる。感覚ではなく数字で見えると、優先して見直す家電が判断しやすくなる。
電気代の計算式と目安になる単価
電気代は次の式で概算できる。電気代(円)= 消費電力(W)÷ 1000 × 使用時間(h)× 電力量単価(円/kWh)という関係だ。消費電力をワットからキロワットに直し、使った時間と1キロワットアワーあたりの単価を掛けるだけなので、家電の表示値がわかれば自分で試算できる。
単価の目安としては、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める電気料金の目安単価が参考になる。この目安単価は令和4年7月22日に改定され、31円/kWh(税込)とされている。家電のカタログなどで電気代の目安を示すときにも使われている、全国平均的な単価の一例だ。ただし実際の単価は契約している電力会社・料金プラン・使用量によって変わるため、正確に知りたい場合は自宅の検針票や電力会社のマイページで確認するとよい。
この式と単価を使えば、あとで紹介する試算のように「この家電を1日◯時間使うと月いくらか」をおおまかに見積もれる。節約の効果を数字でイメージできるようになるのが、計算式を知る一番のメリットだ。
1日8時間・月20日でどのくらい増えるか
先ほどの式に、在宅勤務らしい使い方を当てはめてみる。ここでは目安単価31円/kWhを使い、1日8時間・月20日(=月160時間)稼働した場合を例に計算してみよう。数字はあくまで計算例で、実際の消費電力や単価によって変わる点は押さえておきたい。
仮に消費電力50Wのノートパソコンなら、50 ÷ 1000 × 160時間 × 31円 = 約248円/月という計算になります。これが消費電力100Wの機器(デスクトップと小型モニターの合計など)だと同じ条件で約496円/月、500W級の電気ヒーターやエアコンの負荷が重なる時間帯があると、金額はさらに大きく積み上がっていく。
こうして分解すると、パソコン単体の増加は月数百円規模でも、冷暖房が加わることで在宅勤務全体の電気代がまとまった額になりやすいことがわかる。つまり節約の効果を出したいなら、金額の大きいエアコンや電気ヒーターから優先的に見直すのが合理的だ。
在宅勤務の電気代を抑える節約のコツ

エアコンの使い方を見直す
電気代への影響が大きくなりやすいエアコンは、使い方を少し変えるだけで負担感が変わることがある。基本は設定温度を無理のない範囲にとどめ、こまめなオンオフより連続運転のほうが効率的な場面が多いこと、フィルター掃除で余計な負荷を減らすこと、といった定番の工夫が効きやすい。
サーキュレーターや扇風機で空気を循環させると、冷気や暖気が部屋に行き渡りやすくなり、エアコンの設定を控えめにしても体感が保ちやすくなります。特に書斎のような狭い個室では、空気のムラができやすいため、風を回す一手間が効いてくる。ただし体感の変化には個人差があり、部屋の広さや間取りによっても効果は変わる。
書斎にエアコンがない、あるいは設置できない環境で夏冬を乗り切る方法については、以下の記事で代替家電の選び方を詳しくまとめている。

待機電力と電源まわりを整える
使っていない機器がコンセントにつながったまま消費する「待機電力」も、積み重なると無視できない。プリンター、外部スピーカー、充電器、予備のモニターなど、常時使わない機器はこまめに電源を切っておきたい。
スイッチ付きの電源タップを使えば、使わない機器の通電をまとめてオフにでき、抜き差しの手間なく待機電力を減らしやすくなります。デスク下の配線が整理され、作業環境がすっきりする副次的なメリットもある。仕事終わりに一括でスイッチを切る習慣にすると続けやすい。
パソコン・モニター・照明の省エネ設定
毎日長時間使うパソコンやモニター、照明は、設定を少し見直すだけで消費電力を抑えやすい。画面の明るさを必要以上に上げない、離席時にスリープや自動オフを働かせる、といった小さな調整でも、稼働時間が長い在宅勤務では効いてくる。
照明を消費電力の小さいLEDに替える、手元だけを照らすデスクライトを併用して部屋全体の照明を抑える、といった工夫も電気の使い方を軽くしやすい方法です。冬に足元が冷えるときは、部屋全体を暖める電気ヒーターより、消費電力の小さいデスクヒーターや電気毛布で局所的に暖めるほうが、電力を抑えやすい場合がある。
料金プランの見直しと会社の手当・経費の確認
家電の使い方だけでなく、契約している電力会社の料金プランを見直すことも選択肢になる。在宅勤務で日中の使用量が増えたなら、時間帯別の単価やプラン内容が今の生活に合っているか確認してみる価値がある。プラン変更や乗り換えで単価が変わることもあるため、検針票を手元に比較するとよい。
あわせて確認したいのが、勤務先の在宅勤務手当や費用精算の制度だ。在宅勤務で増えた電気代の一部を会社が負担してくれる制度があるかどうかは、就業規則や総務・人事に確認しておきたいポイントです。制度の有無や金額は会社によって大きく異なるため、まずは自社のルールを調べるところから始めるのが現実的だ。会社に電気代を請求できるのかという税務上の考え方は、このあとのよくある質問でも触れている。
書斎のエアコンにかかる電気代を具体的に抑える工夫は、以下の記事でもまとめている。あわせて参考にしてほしい。

よくある質問
Q1. 在宅勤務で電気代は月いくらくらい増えますか?
増加額は使う家電・稼働時間・季節・地域や契約プランによって大きく変わるため、一律の金額は言えません。目安として、消費電力50Wのノートパソコンを1日8時間・月20日使うと、目安単価31円/kWhで計算して月およそ250円前後です。ここにモニターや照明が加わり、さらに夏冬はエアコンの負荷が乗るため、季節によって増え方に差が出ます。正確に知りたい場合は、電気代の計算式に自宅の家電の消費電力を当てはめて試算するのが確実です。
Q2. 電気代が一番かかる家電はどれですか?
在宅勤務の環境では、消費電力が数百ワット規模になりやすいエアコンや電気ヒーターなどの冷暖房機器が電気代に大きく影響しやすい傾向があります。パソコンや照明は相対的に消費電力が小さいことが多いですが、デスクトップパソコンや大型モニターは機種によって電力が大きくなる場合もあります。実際にどれが多いかは製品や設定によって変わるため、ワットチェッカーで実測すると自分の環境の優先順位が把握しやすくなります。
Q3. 在宅勤務の電気代は会社に請求できますか?
会社が費用を負担するかどうかは各社の制度によります。税務面では、国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」で、業務に使った電気料金を合理的に算出して実費を精算する場合は給与として課税されない、という考え方が示されています。FAQでは電気料金の業務使用部分を求める計算方法の一例として、電気料金に「業務に使った部屋の床面積 ÷ 自宅の床面積」と「1か月の在宅勤務日数 ÷ その月の日数」を掛け、さらに2分の1を掛ける算式が紹介されています。一方、精算ではなく渡し切りの手当として支給される場合は課税対象になります。制度の有無や運用は会社ごとに異なるため、まずは勤務先の総務・人事に確認してください。
Q4. 一人暮らしでも電気代は節約できますか?
一人暮らしの在宅勤務でも、できることは同じです。金額の大きいエアコンの使い方を整え、待機電力をスイッチ付き電源タップでまとめて切り、照明をLEDに替えるといった基本の工夫は、世帯人数に関係なく効果が出やすい方法です。作業する部屋を一つにまとめて冷暖房の対象を絞る、日中は自然光を活かして照明を減らすなど、生活動線に合わせた小さな見直しも積み重なります。まずは負担の大きい家電から手を付けるのが、無理なく続けるコツです。
在宅勤務の電気代は仕組みを知れば抑えられる
在宅勤務の電気代を抑えるためのポイントを整理しておく。
- 電気代は「消費電力(W)÷1000 × 使用時間 × 単価(円/kWh)」で概算でき、単価の目安は31円/kWh(税込)
- 金額に影響しやすいのはエアコン・電気ヒーターなどの冷暖房。パソコン・照明は相対的に小さい
- エアコンは設定温度と連続運転・フィルター掃除、サーキュレーター併用で負担感を抑えやすい
- 待機電力はスイッチ付き電源タップでまとめてオフ。画面の明るさやスリープ設定も見直す
- 料金プランの見直しと、勤務先の在宅勤務手当・費用精算制度の確認もあわせて行う
電気代は「なんとなく高い」と感じているうちは対策が打ちにくいが、家電ごとに分解して計算式に当てはめると、どこを見直せば効くのかがはっきりする。金額の大きい家電から無理のない範囲で見直していけば、在宅勤務の電気代は少しずつ抑えていくことにつながります。まずは今日、手元の家電の消費電力を一つ確認するところから始めてみてほしい。
参考:全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問Q&A(電気料金の目安単価)」/国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」

